
「合意がある」の中にも、まるで違う関係があった
オープンリレーションシップやポリアモリーという言葉、最近は耳にする機会が増えましたよね。言葉の使われ方には幅がありますが、互いに了解したうえで複数の恋愛や性的関係を認めることを、研究では「合意のある非独占関係」と呼びます。
ここで面白い調査があります。米国の研究者が、オンライン調査に参加した1658人の回答を分析したものです。注目したのは、相手と本当に合意しているか、話し合えているか、そして本人がその関係を心地よいと感じているか。英語の頭文字で「3つのC」と整理しました。
すると、単に「一対一ではない」という括りでは見えなかった違いが出てきました。互いに了解し、会話もでき、安心感が高いグループがある一方、片方だけが外の関係を望むグループや、部分的にしか話が合っていないグループも見つかったんです。後者では関係の満足度などが低い傾向もありました。
つまり、「独占しない」人たちは一枚岩じゃない。ここが大事なのに、恋愛の議論ではよく全部まとめてしまいます。
「いいよ」は、本音か。それとも別れたくないだけか
たとえば、二人のうち一人が「これからは、ほかの人とも会える関係にしたい」と言い出した場面を想像してみてください。もう一人は本当は嫌だけれど、「断ったら別れることになるかも」と思って「いいよ」と答えた。
言葉の上では、確かに「いい」と言っています。でも、その人は本当に選べたのでしょうか。
ここで思い出したのが、スマホの利用規約です。「同意する」にチェックを入れたからといって、内容に納得しているとは限らないですよね。恋人との約束だって、それと少し似ています。
しかも、人間の気持ちは利用規約よりずっと変わります。最初は平気だと思ったのに、実際に相手が出かける夜になると眠れなくなる。想像していたより嫉妬する。反対に、案外平気だったと気づくこともある。
最初の返事を永久保存して「前にOKしたじゃん」と突きつけられたら、約束というより、もう逃げ道のない契約になってしまいそうです。
もう一人の相手は「二人の決定」に含まれている?
さらに見落としやすい人がいます。新しく関係に加わる相手です。
もともとの二人が「お互いの交際については詳しく聞かない」と決めたとしても、第三者には自分の関係をどう扱ってほしいか、何を秘密にしたいかという希望があります。二人だけで「このルールなら全員大丈夫」とは決められません。
たとえば、パートナーには外での交際を伏せる約束なのに、そこで出会った人からは「自分との関係を隠されるのが嫌だ」と言われたら。これは、誰かが悪人でなくても起きる衝突です。
「オープン」という言葉からは自由が浮かびます。でも、自由を増やすほど、考える相手と約束が増えることもあるんですね。
じゃあ、一対一のほうが幸せなのか?
ここでまた、意外な研究があります。2025年にオンライン公表された、35研究・合計2万4489人をまとめた分析では、一対一の関係と、合意のある非独占関係の間で、関係満足度や性的満足度に全体として有意な差は見つかりませんでした。
もちろん、この結果は「どんなオープンな関係もうまくいく」という意味ではありません。研究は主に欧米の自己申告データで、最初からその形を望んで選んだ人も含まれます。誰かを説得して関係を開けば幸せになる、という実験でもありません。
でも、「一人だけを愛するから幸せ」「複数の人を愛するから自由で幸せ」。どちらの決まり文句も、現実を説明するには少し足りなさそうです。
面白いのは、結局、人数の話より「自分の希望を言えるか」「嫌になったら見直せるか」の話に戻ってくること。二人だけの関係にも、そのまま当てはまりませんか。
「許したんだから文句なし」が、一番危ないのかも
もし自分たちの関係の形を考えるなら、最初に決めたいのは「外で何をしていいか」の一覧よりも、「気持ちが変わったらどうするか」かもしれません。
たとえば、片方がつらくなったとき、いったん新しい約束を止められるのか。話したくない詳細と、健康や安全のために共有すべき情報をどう分けるのか。「嫌だ」と言ったことで不利益が生じないか。ここに答えがないまま、「合意済み」の一言で進むのは怖いですよね。
今回の研究を読んで、印象が変わったことがあります。「合意があるか、ないか」は入り口にすぎない。もっと気になるのは、その合意が今も生きているか、ということでした。
恋人同士が一度「いいよ」と言ったら、その言葉はいつまで有効なんでしょう。たぶん、そこを聞くほうが「オープンな関係ってアリ?」と賛否を争うより、ずっと面白い話ができそうです。
出典
資料の確認日:2026年10月11日
- 1. Hangen F, Crasta D, Rogge RD. (2020). Delineating the Boundaries Between Nonmonogamy and Infidelity: Bringing Consent Back Into Definitions of Consensual Nonmonogamy With Latent Profile Analysis. The Journal of Sex Research, 57(4), 438–457.
DOI:10.1080/00224499.2019.1669133
- 2. Anderson JR, et al. (2026). Countering the Monogamy-Superiority Myth: A Meta-Analysis of the Differences in Relationship Satisfaction and Sexual Satisfaction as a Function of Relationship Orientation. The Journal of Sex Research, 63(1), 130–142.
オンライン公表:2025年3月24日 DOI:10.1080/00224499.2025.2462988